「長崎市と広島市は共同で今年の11月11日から、スイス・ジュネーブの国連欧州本部内に原爆資料を常設で展示する。」と朝日新聞2011.10.18は伝えました。記事紹介をつづけます。
「長崎市の浦上天主堂で被爆した天使像や原爆投下当日の広島市の写真などを出展。両市による常設展は米ニューヨークの国連本部に続き2カ所目となる。
長崎市が17日に発表した。設置場所は国連欧州本部1階のエントランスホール。メーンの天使像は爆心地から約500メートルの浦上天主堂外壁に飾ってあった石像で高さ53センチ、重さ約150キロ。キリスト教文化を持つ欧州で理解を深めてもらえるよう天主堂から市が寄贈を受けた。
長崎市からは天主堂の壁の一部など計8点。広島市からは熱線で溶けた屋根瓦や変形したガラス瓶など5点。このほか長崎で背中に大やけどを負った谷口稜嘩(たにぐちすみてる)さんや広島市街地などの写真十数点も展示する。」
遅かったという思いと、これからでも十分意義はあるという思い半ばで、記事を読みました。やはり福島原発の大事故がきっかけになったのでしょう。
「スイスに原発があったのか!」と驚いた記憶が甦りました。1980年10月、チューリッヒからマドリッドに飛ぶ飛行機の窓の下に、水蒸気を上げている原子力発電所を見たときのことです。ドキッとしました。自然とともに暮らすスイスに「原発がある」など、思っても見なかったのでした。
ジュネーブはフランス語圏、フランスのすぐ隣です。そのフランスは電力のほとんどを原子力に頼っているという。そんなことも当時のぼくは知らずにいました。
長崎市長は今年の平和宣言のなかでこう述べています。
「『ノーモア・ヒバクシャ』」を訴えてきた被爆国の私たちが、どうして再び放射能の恐怖に脅(おび)えることになってしまったのでしょうか」。
この長崎・広島両市の被爆資料展示は、放射能の本当の恐ろしさをヨーロッパの市民たちに、五感を通して伝える強いメッセージとなるでしょう。平和のための外交官の役を果たしてくれることを祈ります。
自然に対する「畏敬の念」を忘れた文明人が、文明のあり方を本気で考え直す時が来ているはずだと思うのですが。
もうひとつ思うことは、世界の主要都市で原爆資料展示が巡回されること。そして、丸木夫妻の『原爆の図』が、複製でもよいから主要な美術館で展示、所蔵されることです。日本しか体験したことのない大規模な被爆(市民の大量殺戮)を改めて伝え、本当の意味で「核のない世界」を人類として考えるきっかけをつくってほしいということです。
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