【海が待っていた!】という手紙を5月5日に書きました。その続編報告です。
災 害で漁業が壊滅した岩手県大船渡市。豊富な漁場の海は目の前に。なのに漁ができない。販売の手だては消失し、加工も不能になったからだった。海は、漁を待っていた。
その現実のなか、「獲れたての魚類を全国に」を考えだした人がいた。八木さんです。八木さんは自分の販売事務所も壊滅、パソコンとケイタイ電話だけをもって避難していた。その2つの道具を使って、鮮魚を消費者に直接販売する、いわば手づくり事業を始めた。そして、全国から注文を受けることに成功。
漁港のシステムが復興しなくても、「漁業」はできる。これは関係者にどれほどの希望と励ましになったことか。
あれから2ヵ月。いま、八木さんはどうしているのか?
八木さんは、さらに新しい知恵を出していた。上記の成功体験をもとに、獲った海産物の加工販売です。海産物は漁港での販売価格はすこぶる安い。加工して付加価値ある商品に作れば好ましい価格で流通する。例えばイワシ100尾=20円。しかし、加工すれば20尾=20円。そこに着眼。
煮ダコの得意な人がいた。その達人と連帯して名産の蛸を「煮ダコ」の商品化へ。秘訣は煮汁だという。何年もかけて煮つづけた達人の煮汁は、マネのできない独特の味になっていた。特産の「煮ダコ」が生まれます。価格も価値に見合ったものに。かくて、大船渡に特産物が誕生。
原料は漁師が獲り、加工して付加価値をつける。価格は5倍ほどになるだろうという。漁獲者の漁師が販売過程に直結していくことによって、漁師というビジネスの意味が変わる。収入も改善。漁師という仕事の喜びと励みも増えていく。という構図が見えてきます。
政治にも行政にもできない真の改革が、ひとりの人物の想像力と構想力から始まっている。そのことがすばらしいと思えました。
さらに構想は進みます。「販売事務所の」近くに「レストラン」と「漁師の番屋」
を、という計画。漁場と都市の人びとを結びつけようというのでしょう。とれたての海産物を海の近くで味わう。漁師番屋で漁師と語り合う。両者の喜びと満足。都市と漁場のライブ・コミュニケーションです。
八木さんの、生きのよい言葉を聞きましょう。
「構想力。原理・原則考えることだと思う」
「仕組みを変えないと復興はできない」
「販売業者と漁師の思いが変った。産業としての漁業に改革。新しい基本・基礎を創ろう」
前回、八木さんは
「生産者の人格が見える商品を、直接届けたい」
「未来に、ちゃんとつながる販売の手応えを」
と語っていました。約2ヵ月の間に、上記のような前進を遂げていたのです。
① 改革は、志ある1人の知恵(基本を考える構想力)から起こり、
②地域住民とつながる(連帯する)とき、
③希望となって人を活気づけ、
④社会の仕組みを改善していく。
この例は、それを語っているのではないでしょか。
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